薄毛・抜け毛が気になったときに、手に取りたくなる育毛剤。ところが、最近は発毛剤という商品も各社から登場しています。育毛剤と発毛剤にはどのような違いがあり、それぞれどのような人に向いているのでしょうか。
育毛剤と発毛剤の違いとは?
髪の悩みを持つ人の間で、注目されている育毛剤や発毛剤。実はその違いをよく知らない、という人も多いのでは?
普段私たちが薬局やドラッグストアで購入する商品は、「薬機法」という法律によって以下の3つに分類されています。
★化粧品
☆身体を清潔にするため、外見の魅力を増すために使われるもの。医薬部外品よりも作用はゆるやか
★医薬部外品
☆症状の予防を目的に使われるもの。医薬品よりも作用はゆるやか
★医薬品
☆病気の予防や治療に使われるもの。医師の処方箋が必要な「医療用医薬品」と、処方箋なしで購入できる「一般用医薬品(OTC医薬品)」がある
育毛剤は主に医薬部外品として、発毛剤は医薬品として扱われています。
化粧品の薄毛・抜け毛対策商品
化粧品に分類される薄毛・抜け毛対策商品には、頭皮用ローションなどがあります。フケ・かゆみを抑え、不足しがちな水分や油分を補って、頭皮や毛髪を健やかに保ちます。作用はとても穏やかなので、薄毛・抜け毛の悩みの有無に関わらず幅広い人が使用することができます。
医薬部外品の育毛剤
医薬部外品の育毛剤には厚生労働省が認可した有効成分が配合されており、限定された範囲で特定の効果・効能が認められています。「薬用育毛剤」「薬用発毛促進剤」など「薬用」と付いていることもあります。以下のような作用で抜け毛を防ぎ、健やかな髪が生えるための頭皮環境を整える効果が期待できます。
医薬部外品の育毛剤の作用と主な有効成分
★頭皮への血行促進
☆ビタミンE、センブリエキス、トウガラシチンキ、ニコチン酸ベンジルなど
★頭皮への栄養補給
☆ペンタデカン酸グリセリド、ニンジンエキス、ニコチン酸アミドなど
★抗炎症・抗菌作用
☆グリチルリチン酸ジカリウム、β-グリチルレチン酸、ヒノキチオールなど
育毛剤は抜け毛や髪のハリ・コシが気になり始めた人、早いうちから薄毛・抜け毛対策を始めたい人が、予防目的でとり入れるのに適しています。
医薬品の発毛剤
臨床試験の結果に基づいて効能・効果を取得した脱毛症の治療薬です。前述のとおり医療用医薬品と一般用医薬品(OTC医薬品)があり、さらに塗り薬と飲み薬があります。
医薬品の発毛剤の配合成分
★ミノキシジル
☆血管拡張により発毛・育毛を促す塗り薬。医療用医薬品と一般用医薬品(OTC医薬品)がある。
★フィナステリド
☆医療用医薬品の飲み薬「プロペシア」の主成分。5αリダクターゼの働きを阻害する
★デュタステリド
☆医療用医薬品の飲み薬「ザガーロ」の主成分。5αリダクターゼの働きをより強力に阻害する
ミノキシジルはAGA(男性型脱毛症)やFAGA(女性型脱毛症)を含めた壮年性脱毛症(加齢により増える抜け毛)や、円形脱毛症の治療に適しています。使用時には注意が必要なため、一般用医薬品(OTC医薬品)のなかでも「第1類医薬品」に分類されています。このため、ドラッグストアやネット通販などで購入するときは、薬剤師による適正使用の確認が必要です。
日本皮膚科学会が作成した「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン 2017 年版」では、男性型脱毛症には5%ミノキシジルの外用、あるいはフィナステリドやデュタステリドの内服が有用とされています。また、女性型脱毛症には、1%ミノキシジルの外用が有用とされています。女性や未成年者は、フィナステリド・デュタステリドどちらも使うことができません[1]。
発毛剤は効果が高い分、頭痛やめまい、ED、肝機能障害などさまざまな副作用が現れることもあります。自己判断で安易に使用することや、発毛剤を海外から個人輸入して使うことは絶対にやめましょう。
発毛剤の作用や副作用について詳しくは、『育毛に効果的な薬用育毛剤・錠剤に含まれる成分の特徴、副作用について』もご覧ください。
育毛剤と発毛剤どちらを使うべき?
育毛剤と発毛剤、それぞれに期待できる効果についてご紹介しました。どちらを使うべきか、ご理解いただけたでしょうか。
育毛剤は「頭皮環境を改善して薄毛や抜け毛を予防したい」という人に向いています。頭皮を健やかに洗い上げることを目的としたシャンプーとセットで使うのもよいでしょう。
一方、発毛剤は、AGAや円形脱毛症など、すでに抜け毛が進行している人が治療目的でとり入れるものです。医薬品ですので、使用方法や副作用などをきちんと把握したうえで使う必要があります。
また、育毛剤や発毛剤に頼るだけでなく、生活習慣の改善も必要です。十分な睡眠を取ってストレスを上手に解消し、タンパク質やビタミン・ミネラルなどさまざまな栄養素をバランスよく摂取しましょう。
『髪の毛を増やす方法とは?食べ物・ヘアケアでの抜け毛や薄毛対策と育毛剤の選び方』や、『毎日の髪の毛のケア方法|髪の傷みをお手入れして美髪ヘアへ』などもぜひ、参考にしてください。
<参考文献>
[1]山㟢正視ほか. “男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版” 日本皮膚科学会ガイドライン.
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf(参照2019-04-01)
- この記事の監修専門家
- スキンクリニック藤枝 院長
小野 健太郎