育毛の基礎知識

ノコギリヤシは薄毛予防に効く?男性ホルモンへの働きと期待される効果

成分と効果

薄毛や抜け毛の悩みを自覚するようになると、育毛剤やサプリメントなどで改善の方法を探りたくなりますよね。クチコミやネットなどで「ノコギリヤシがいい」と見聞きしたことのある方も多いのではないでしょうか。ノコギリヤシに期待できる働きについて、海外の研究報告などを交えてご紹介します。

 

薄毛のしくみとノコギリヤシに期待される働き

一般的な加齢による薄毛以外にも、薄毛の原因となるものがあります。そのメカニズムと、ノコギリヤシに期待される働きについてご紹介します。

 

薄毛のしくみ

薄毛はさまざまな原因で起こります。もっとも多いのは、男性ホルモンによって薄毛が進行する男性型脱毛症(AGA)です。

AGAは血中をめぐっているテストステロン(男性ホルモンの一種)が5αリダクターゼという酵素と結びつき、ジヒドロテストステロン(DHT)という、より強力な男性ホルモンに変換されることで起こります。

DHTは毛乳頭細胞に存在する男性ホルモン受容体と結びつき、「成長期」「退行期」「休止期」という一連の流れを持つヘアサイクルを狂わせます。毛乳頭の働きが活発化する「成長期」がDHTの影響によって短くなるため、毛髪が太く長く成長しないまま抜けてしまい、薄毛になっていくのです。

AGAの治療に使われる薬の一つに「フィナステリド」があります。フィナステリドはもともと、男性ホルモンが原因で引き起こされる前立腺肥大症に効果がある薬として用いられていきました。その後、低用量でAGAの治療にも効果があることがわかり、AGA治療にも導入されるようになっています。

 

ノコギリヤシに期待される働きとは

ノコギリヤシとは、ノコギリ状の葉をしたヤシ科植物です。北米南東部に分布しており、古くからその果実が現地の人の食べ物として、また民間薬として使われてきました。

このノコギリヤシにもフィナステリドと同じように、男性ホルモンに作用する働きがあります。そのため海外では、前立腺肥大症の治療にノコギリヤシが用いられることもあります。

ノコギリヤシの脂溶性抽出物には、テストステロンをDHTに変換する5αリダクターゼの働きを阻害する作用があり、このことからAGAの改善にも効果があるのではと考えられるようになってきています。

 

ノコギリヤシとAGAに関する研究

ノコギリヤシのAGAへの効果について、さまざまな研究が報告されています。今回は、海外で発表された研究から2例をご紹介しましょう。

 

フィナステリドとの比較有効性実験(2012年)

症状が軽度~中程度のAGAと診断された男性患者100名を2グループに分け、片方のグループにはフィナステリド1mgを、もう片方にはノコギリヤシエキス320mgを服用させた実験があります。2年間にわたって毎日服用した結果、フィナステリドを服用したグループでは68%に、ノコギリヤシを服用したグループでは38%に発毛や薄毛改善効果が見られました。

この結果からノコギリヤシは、フィナステリドには及ばないものの、AGAの改善に役立つ可能性があると示唆されました。この実験ではさらに、フィナステリドが生え際と頭頂部の両方に作用したのに比べて、ノコギリヤシは頭頂部でのみ優位に作用したことも観察されています[1]。

 

ノコギリヤシ製剤を局所投与した実験(2016年)

20歳から50歳までの男性ボランティア50名に、24週間に渡ってノコギリヤシ抽出物の局所投与を行ったところ、実験開始時と比べて12週目および24週目において平均毛髪数の増加が確認されました。24週目以降は効果が横ばいとなりましたが、これはノコギリヤシ抽出物の局所投与を中止したためと考えられています。

この研究ではAGA治療に、ノコギリヤシ抽出物が代替治療となりうる可能性があると結論づけています[2]。

 

ノコギリヤシの取り入れ方

最後に、ノコギリヤシの取り入れ方と注意点についても見ておきましょう。

 

サプリメントが便利

ノコギリヤシの有効成分は主に、果実に含まれる脂溶性成分です。海外では抽出物を錠剤やカプセル化することが多いようです。また、お茶も市販されています。日本国内では、健康食品(サプリメント)が入手しやすく、日常的に摂取もしやすいでしょう。

また、薄毛や抜け毛の改善を目的にノコギリヤシを取り入れるのであれば、あわせて適切なヘアケアで頭皮環境を整えましょう。栄養バランスのとれた食事を心がける、十分な睡眠をとる…など、生活環境の見直しも大切です。

 

ノコギリヤシを摂取する際の注意点

ノコギリヤシを健康食品(サプリメント)で摂る場合、食品ですので副作用が起こる可能性は少ないと考えられます。ただし、一度に大量摂取したり、体質的に合わなかったりしたことで腹痛や吐き気、めまいなどの症状が現れたケースが報告されています[3]。必ず推奨摂取量を守り、体調変化が見られた場合はただちに服用を中止しましょう。

またノコギリヤシには、血液凝固を抑制する作用があります。もしワーファリンなど血栓を防ぐ薬を服用している場合、一緒に飲むと出血傾向が高まる可能性があります。また、妊娠中・授乳中の女性は使用してはいけません[3]。

他にも医薬品との相互作用が報告されていますので、現在服薬治療中の人は、念のためかかりつけ医に相談してからのほうが安心して使用できるでしょう。

<参考文献>
[1]RossiA, et al. Comparitive effectiveness of finasteride vs Serenoa repens in male androgenetic alopecia: a two-year study, Int J Immunopathol Pharmacol 2012; 25(4): 1167-1173
[2]Wessagowit V, et al. Treatment of male androgenetic alopecia with topical products containing Serenoa repens extract, Australas J Dermatol 2016; 57(3): e76-82
[3]「健康食品」の安全性・有効性情報. “ノコギリヤシ、ソウパルメット” 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所ホームページ.
https://hfnet.nibiohn.go.jp/contents/detail70.html(参照2019-05-28)

この記事の監修ドクター
ドーズ美容外科 佐賀院 院長
田崎 公
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