育毛の基礎知識

亜鉛は育毛にどう役立つ?効果的な取り入れ方もチェック

成分と効果

男性が注目したい栄養素のひとつ、亜鉛。体内や育毛においてどのような働きを担い、不足するとどうなってしまうのでしょうか。亜鉛を摂取する際のポイントについても紹介します。

 

亜鉛とは?

亜鉛は自然界に存在する栄養素であり、人の健康や栄養維持に欠かせない必須ミネラルの一種です。体内のさまざまな細胞、特に新陳代謝が盛んな組織や部位(歯や骨、肝臓・腎臓、筋肉など)に存在しています。

 

体内における働き

亜鉛は、傷や皮膚炎を治癒するために使われたり、味覚や嗅覚を正常に保つためにも使われたりしています。亜鉛はさらに、細胞の成長や分化において中心的役割を果たしており、タンパク質合成やホルモン合成、DNAの転写、免疫機能の調節などさまざまな生理機能に関わっています。そのため亜鉛は、妊娠中の女性や育ち盛りの子供にとって、特になくてはならない栄養素といえるでしょう。

 

育毛における働き

体内にある亜鉛の約8%は、毛髪や皮膚(頭皮を含む)に存在しています[1]。毛髪や頭皮の主成分は、もちろんタンパク質。特に毛髪の主成分であるケラチンというタンパク質の合成には、亜鉛が欠かせません。そのため、亜鉛は育毛を目的としたヘアケアアイテムやサプリメントによく配合されています。

育毛において重要な亜鉛ですが、AGA(男性型脱毛症)への効果はまだ結論が出ていません。亜鉛はテストステロンの合成や分泌にも関与していますが、体内でテストステロンが増えたからといって、それがそのままAGAを引き起こすジヒドロテストステロン(DHT)に変化するとは限らないからです。亜鉛とAGAとの関係性については、今後の研究にも期待しましょう。

 

どんな食べ物に多い?あわせて摂りたい栄養素は

亜鉛が多く含まれる食べ物といえば、真っ先に思い浮かぶのが牡蠣ですよね。確かに牡蠣(養殖もの)には、100gあたり13.2mgもの亜鉛が含まれています[2]。

しかしそれ以外の、たとえばうなぎやホタテ、タラバガニなどの魚介類、赤身の肉、鶏肉などにも亜鉛は含まれていますし、豆類やナッツ、米飯や豆腐、卵黄、チーズ、ごま、ココアや抹茶などにも含まれています。そのため通常の食生活を送っていれば、不足することはまずありません。

また、亜鉛は一度にたくさん摂るよりも、こまめに摂ったほうが体内で効率よく活用されるといわれています。

 

一緒に摂るとよい栄養素は?

亜鉛は主に小腸や十二指腸で吸収されますが、一緒に摂取する食べ物によって、吸収性が変わることがあります。
たとえば肉や魚に含まれる動物性タンパク質(ヒスチジンやグルタミンなどのアミノ酸)や、ビタミンC、クエン酸などは、亜鉛の吸収を促す栄養素といわれています[1]。牡蠣を食べるときは、レモンを添えるとよいかもしれませんね。

 

亜鉛の吸収を妨げる栄養素もある

一方、穀類や豆類に多く含まれるフィチン酸、ホウレンソウなど青菜に多いシュウ酸、加工食品に多いリン酸、食物繊維、乳製品、コーヒー、アルコールなどは、亜鉛の吸収を妨げる働きがあります。

とはいっても、日常生活においてこれらを全く摂らないのは困難です。それに頭皮環境を整えるには、亜鉛だけでなくさまざまな栄養素が必要です。偏食をせず、1日3回の食事ではできるだけ多くの食材を揃えて食べるよう心がけましょう。

 

亜鉛不足や過剰摂取に注意

亜鉛が不足すると、味覚障害や皮膚炎、食欲不振などが起こることがわかっています。ダイエット中の人や食の細い人、動物性タンパク質をあまり摂らない人、激しいスポーツでたくさん汗をかく人などは、亜鉛が不足しやすいので注意しましょう。

かといって、摂り過ぎにも注意が必要です。急激にたくさん摂ると、めまいや吐き気、胃のトラブルを起こすことがあります。さらに過剰摂取が長期に渡ると、銅や鉄の吸収を阻害するため、貧血や免疫障害などの健康被害を起こすことがあります。

 

摂取の上限は?

厚生労働省は、亜鉛の1日あたりの摂取基準を以下のように設定しています[3]。

<食事からの摂取基準(1日あたり)>
・18歳~29歳男性…推奨量10mg、耐容上限量40mg
・30歳~69歳男性…推奨量10mg、耐容上限量45mg
・70歳以上の男性…推奨量9mg、耐容上限量40mg
・18歳~69歳女性…推奨量8mg、耐容上限量35mg
・70歳以上の女性…推奨量7mg、耐容上限量35mg

推奨量とはほとんどの人が満たしている数値、耐容上限量は健康障害をもたらす危険性がない摂取量の上限です。通常の食生活をしている限り、耐容上限量を超えることはほとんどありません。食事のほかサプリメントを併用する場合は、耐容上限量を超えないようにしましょう。

 

栄養はバランスよく摂取することが大切

亜鉛は、頭皮環境改善や育毛に欠かせない栄養素です。ですが、栄養素はバランスよく摂取してこそ効果を発揮します。

育毛目的で亜鉛を摂取する場合はまず「毎日の食事からきちんと摂る」ことを意識し、食生活が不規則になるなど「どうしても足りない」と感じた場合は、栄養補助食品やサプリメントを活用するようにしましょう。あわせて質のよい睡眠や適度な運動、ストレス対策、適切なヘアケアなどを取り入れて、髪や頭皮が健やかに育つ環境を整えていきましょう。

<参考文献>
[1]一般社団法人 日本臨床栄養学会 編 “亜鉛欠乏症の診療指針2016” 日本臨床栄養学会ホームページ. http://www.jscn.gr.jp/pdf/aen20170613.pdf(参照2019-10-08)
[2]文部科学省 “第2章 日本食品標準成分表 PDF(日本語版) 10魚介類” 文部科学省ホームページ. http://www.mext.go.jp/component/a_menu/science/detail/__icsFiles/afieldfile/2017/12/20/1365343_1-0210r11.pdf (参照2019-10-08)
[3]厚生労働省 “日本人の食事摂取基準(2015 年版)の概要” 厚生労働省ホームページ https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/0000041955.pdf (参照2019-10-08)

この記事の監修ドクター
吉井クリニック 院長
吉井 友季子
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