男性の薄毛の悩みに多い、「生え際の後退」。その原因は主に、
○遺伝
○頭皮の血行不良
○男性ホルモンの影響
○偏った食事による栄養不足
などがあります。最近おでこが広くなった、生え際が薄くなってきた、など気になる変化があるようなら早めに対策をすることが薄毛解消のポイントです。
生え際が後退する原因
生え際の後退を食い止めるためには、その原因を知り対策をすることが大切です。ここでは、生え際が後退する原因について詳しくご紹介します。
AGA(男性型脱毛症)
「AGA」とは、男性型脱毛症のこと。思春期以降から急激に増える男性ホルモンの影響により発症します。
一般的に、前頭部の生え際の後退(M型)、頭頂部の髪のボリュームが低下する(O型)などの症状が現れます。前頭部・頭頂部のいずれかが薄毛化する場合もあれば、その両方同時に症状が出る場合もあり、その進行度も人によりさまざまです。
AGAの原因物質は、男性ホルモン(テストステロン)が5α-リダクターゼ(Ⅰ型・Ⅱ型)という酵素により代謝され生じるDHT(ジヒドロテストステロン)です。
髪は、成長期・退行期・休止期で構成されたヘアサイクルによって生え変わります。DHTはこのヘアサイクルを乱し、毛髪が太く長く成長している状態の成長期を途中で停止させ、毛髪が太く長く育つ前に抜け落ちてしまう原因を作ります。
ヘアサイクルは個人差もありますが、一般的に男性なら3年から5年、女性なら4年から6年くらいで一巡するといわれています。
一方で、髪の毛全体の85~90%くらいが成長期にあたるといわれているため、成長期が短くなるAGAでは成長期の太くて強い毛髪が少なくなり、結果として薄毛に見えてしまうのです。
頭皮環境の悪化
強い毛を育むには、土台となる頭皮環境が大切。頭皮の乾燥や毛穴のつまりなど、頭皮環境の悪化も抜け毛につながります。頭皮環境が悪くなる理由には、次のものがあげられます。
カラー剤やパーマ剤などの薬剤や整髪料
過度に強い薬液は頭皮や髪を刺激してダメージを与えることも。薄毛が気になりはじめたら担当のスタイリストに相談し、一旦カラーやパーマを控える、または頻度を減らすなどの対策をとりましょう。ヘアスタイリングに使う整髪料も、頭皮に付かないように使用し、できるだけ髪に負担をかけないものを選びましょう。
間違った洗髪方法
洗浄力の強いシャンプーで頭皮をごしごしこすると、頭皮に必要な油分や水分まで取り除いてしまいます。頭皮が乾燥すると皮脂が過剰に分泌され、フケやかぶれなどの原因に。すすぎ残しも頭皮トラブルを招きます。
紫外線などによる頭部の刺激
顔は日焼け止めクリームなどを塗ってUV対策をしている人は多いですが、実は髪や頭皮も多くの紫外線を浴びています。紫外線を浴び続ける機会が多いと、毛髪内のメラニンが分解されて、赤茶けた髪色に変化します。
また、髪の構成成分は、アミノ酸の結合によって成り立っていますが、紫外線を浴びることで発生する活性酸素の影響で、アミノ酸の結合(シスチン結合)が切断されてしまい、切れ毛や枝毛を招く原因となります。
頭皮の血行不良
生え際が後退する原因のひとつに、頭皮の血行不良があげられます。髪の毛の栄養は、血管を通る血液によって運ばれます。そのため、頭皮の血流が悪くなると髪の毛に充分な栄養が行き届かなくなって髪が育たなくなってしまうのです。
生え際は、頭頂部や後頭部に比べると毛細血管が少ないため、生え際は発毛がしにくい部分。頭皮が硬いと感じたら、血行が悪くなっているサインです。
あなたは大丈夫?生え際の後退度チェック
「生え際が後退してきたかも?」と感じたら、まずは以下の手順でどれくらい後退しているのかチェックしましょう。
おでこの広さをチェック
まずは、おでこの広さを調べてみましょう。鏡の前に座り、片手で前髪をかき上げておでこを出します。もう片方の手の中指・薬指・小指の3本の指をくっつけた状態で、小指が眉毛の上にくるようにおでこに当てます。
中指と生え際の間に隙間が見られなければ、生え際の後退の心配は問題ないでしょう。指が4本分以上の場合は、生え際が後退している可能性がありますが、もともとのおでこの広さは個人差がありますので、あくまでも目安として考えてください。
AGAの進行度を測る際には、「ハミルトン・ノーウッド分類」という9つの進行パターンを示す医学的な基準が設けられています。
まず、耳の上端と頭頂部を線でむすび、その線とM字部分の生え際の距離を測ります。そして、その距離が2cm以下の場合はAGAと判断します。なお、この分類法は、欧米人を対象に作られた分類法です。頭頂部だけが早く進行する日本人に対しては「高島分類」が多く使用されています。
しかし、AGAの進行具合は個人差があるので、気になる方は必ず専門のクリニックに相談することをおすすめします。
頭皮をチェック
次は、頭皮の状態をチェックしてみましょう。指の腹で頭皮にやさしく触れて、頭皮の肌を前後に動かします。この時、健康な状態であれば軽く動きますが、動かしにくいと感じたら頭皮が硬くなっている可能性があります。
頭皮が硬いということは、頭皮の血行が悪いということ。血行不良は髪の栄養不足を招き、抜け毛のリスクになります。
生え際が後退する前からはじめる対策方法
生え際の後退を予防するには、次のような方法があります。薄毛や抜け毛対策としてぜひ取り入れてみましょう。
クリニックで治療を受ける
薄毛改善のもっとも近道は、専門のクリニックに相談することです。クリニックの受診はハードルが高いと感じる方も多いようですが、治療を始めるのが早ければ早いほど、薄毛の改善も早くなります。
髪をつくる毛母細胞の分裂には上限があって、50回前後だといわれています。ですので、成長期の期間が短くなるAGA(男性型脱毛症)の場合は、発症から長期間経過すると毛根自体が死んでしまうおそれがあるため、早期治療が必要です。
生え際が後退していても、産毛が残っている場所からは発毛させることができるので、諦めずにクリニックを受診してみましょう。
クリニックでは、主に有効成分フィナステリドが配合されている内服薬と、有効成分ミノキシジルが配合されている外用薬を使用した治療を行います。
ミノキシジルは外用薬としては使用されていますが、ミノキシジルタブレットなどの内服薬は、副作用のリスクが高いのでAGA専門クリニックでの相談をおすすめします。
生え際は頭頂部と比べると毛細血管が少ないので栄養素が届き難くなる場合が多々あります。効果を出すためにも最低でも半年間は継続することが大切です。
このような投薬治療を長期間行ってもなかなか改善されない場合は、投薬と並行して頭皮に直接、有効成分を注入する治療が行われることもあります。
クリニックにより治療法はさまざまなので、気になる場合はAGA専門クリニックに問い合わせてみましょう。
髪の毛によい栄養素を食事から摂る
薄毛を改善するには、食生活の見直しも必要です。髪の毛によい栄養素を知り、毎日の食事に取り入れてみましょう。食事での抜け毛対策には、すぐに始められるという利点もあります。
髪の毛によいとされる栄養素は主に、
○タンパク質
○ミネラル
○ビタミン
です。それぞれ見ていきましょう。
タンパク質
髪の毛は、アミノ酸が結合したケラチンというタンパク質でできています。牛肉、ラム肉、鶏のササミ、大豆製品、卵、乳製品など、タンパク質が豊富に含まれている食材を摂取しましょう。
ミネラル
体内で分解されたアミノ酸をケラチンに再合成するサポートを担うのが亜鉛です。亜鉛はミネラルの一種。体内で作ることができないため、牡蠣や牛肉、チーズ、レバーなどの食材から摂取しましょう。また、新陳代謝に関わる甲状腺ホルモンを正常に整えてくれるヨウ素もミネラルのひとつ。昆布やひじき、わかめなどのヨウ素を含む食材の摂取により、頭皮環境の改善が期待できます。
ビタミン
ビタミンAは細胞の酸化を緩やかにし、髪や頭皮の健康を保ちます。過剰摂取による害を避けるためにも、必要な分だけ体内でビタミンAに変換されるβ-カロテンを含む緑黄色野菜(カボチャ・ニンジンなどの黄色が濃い野菜、ホウレンソウ・春菊などの緑色が濃い葉物野菜)がおすすめです。
また、細胞の代謝を促進させるビタミンB群には、髪の毛の成長を促す役割と、皮脂の過剰分泌を抑制するという2つの大きな働きがあります。ミネラルも含まれる豚レバーは髪の毛に悩む方に最適な食材でしょう。
そして、ナッツ類やオリーブオイル、野菜に含まれるビタミンEは高い抗酸化作用が期待できる「若返りのビタミン」といわれています。ビタミンEと活性酸素を分解するビタミンC、そして活性酸素の酸化反応を抑えるビタミンA(βカロテン)、この3つは抗酸化ビタミンとも呼ばれ、血管の内壁を丈夫に保つことで血行を促進する手助けをしてくれます。
適度な運動を毎日続ける
育毛のためには、適度な運動も効果的。筋肉の緊張を和らげ、新陳代謝を促します。全身の血液循環がよくなることは、頭皮への血流増加につながります。しかし、激しい運動のやりすぎは活性酸素を増やし、細胞の老化を招くといわれているので注意しましょう。
ウォーキングや軽いジョギング、ゆっくりと泳ぐ水泳など、無理なく毎日続けられる運動を1日30分~1時間程度続けましょう。
育毛剤で頭皮環境を整える
薄毛対策として、育毛剤を取り入れることも有効です。育毛剤には保湿成分や血行を促進する成分などが含まれており、頭皮環境を整えてくれる効果があります。
ドラッグストアなどで手軽に買えることも魅力なので、薄毛が気になり始めたら、まずは今後の薄毛対策として取り入れてみるのもいいでしょう。
頭皮マッサージで頭皮の血行をよくする
今までお伝えしてきたように、抜け毛を予防するには頭皮の血流がとても重要です。頭皮の血行をよくするために有効なのが、頭皮のマッサージです。やり方さえ覚えたら簡単にできるので、空いた時間などを利用して行いましょう。
基本の手順は以下の通りです。
△1指の腹を使って、頭皮をやさしくマッサージするようにもむ
△2前髪の生え際から、頭頂部に向かって頭皮をひきあげるように指圧する
△3両手の指先を使って、頭皮をポンポンと軽くたたく
頭皮はとてもデリケートな部分なので、くれぐれも爪などで傷つけないように気をつけて行いましょう。小指を使うと爪が当たることがあるため、慣れるまでは小指以外の指を使うことをおすすめします。また、強くこすりすぎ、マッサージのやりすぎにも注意しましょう。
まとめ
生え際が後退するのはAGAのほかにも、
○カラーリング方法やパーマ
○シャンプーの種類
○シャンプー方法
○紫外線による頭皮ダメージ
○頭皮の血行不良
などが原因となりうることがわかりました。まずは自分の生え際の状態をチェックし、担当のヘアスタイリストに相談して、クリニックでの早期治療も視野に入れつつ、食事の見直しや適度な運動、頭皮マッサージなど明日からでも始められる育毛習慣を取り入れてみましょう。
- この記事の監修専門家
- Aura代表 毛髪診断士 / JHSA認定講師
谷平 達昭